深く潜るということ-1
沈船ダイビング Wreck Deep Diving
チュークでディープダイビングを売っている オデッセイ
深く潜った追風だから、深く潜ることを考えて見よう。
人は、海では、あるいは湖では、深く潜りたがる。高い山があれば登りたくなる。空を飛べば、速く、高く飛びたい。ついには宇宙へと飛び立ちたい。生き物の一つの本能、業とも、宿命ともいえるかもしれない。
さて、どのくらいの深さまで潜れば、深く潜ったということになるのか、いろいろな考え方があるが、一応決めておこう。まず、水深40mまでは、普通の潜水である。トレーニングと経験を積めば、誰でも潜れる。40ー80ぐらいまでをここで言うディープダイビングとしよう。
作業潜水の分類では、60ー100mが中深度潜水、100m以上が大深度という。すなわち、ここでは、中深度のダイビングをディープダイビング、深い潜水とする。
深く潜れれば、それだけ行動範囲が広がるわけだから、見られる、観察できるものも増える。もちろん採集できるものも増える。だから、実用的に言っても、意味がある。ダイビングは、深く潜るためのものではない、などと言うが、深く潜れた方が良いに決まっている。
しかし、問題は安全性である。他からの助けが得られない、スクーバでは、深さと危険とは比例する。危険を冒してまで深く潜るものではない。と言われればそれは正しい。
危険を冒す価値があるものは、まず軍事目的、次いで金銀財宝、金銀財宝とは、広く解釈すれば、経済的な欲求である。また、科学研究者にとっては、自分の研究のための潜水ならば、危険を冒す価値があるだろう。そして、先に述べたように、人は宿命的な衝動、欲求で、何にもならなくても、深く潜ってしまう。深く潜りたい。
深く潜る目的を整理すると。
①機材の開発、技術的な完成を求める。ハードとソフトの開発であり、財宝の獲得、戦争目的が動機づけになり、平行して行われてきた。
②ただ、とにかく深く潜る。
③探検、探求
探検、探求は、財宝、経済目的とクロスオーバーするが、ダイビングの目的の王道である。現代社会では、究極のレクリエーションでもある。
探検、探求の具体例は、
①水中の科学的、学術的探検、探求、あるいは仕事的には調査
これは、スクーバダイビングの主目的ともいえるので、さらに細分できる。
②洞窟探検、
鍾乳洞は水で侵食されて作られた洞窟だから、行き止まりは水になり、その先を極めようとすれば、ケーブダイビングになる。
③沈船ダイビング
前置きが長くなってしまったが、沈船ダイビングがこの項の目的である。
財宝を目標とした沈船ダイビングは、古くから行われ、現在でも行われている。日本で一番著名なのは、日本海海戦で沈んだロシアの巡洋戦艦「ナーヒモフ」の潜水である。現在は行われていないが、後で述べる僕のバディをやってくれた、田島雅彦は、この宝探し飽和潜水に参加していた。このダイビングのことを書けば本になる。
なぜ、トラック島の沈船にとりつかれるかといえば、まず深いから、その深さが適当であるからである。
もしも沈船が100mを越えていたら、それこそ、ナヒモフ号の探査のように、ダイビングベル、SDCとDDC(再圧室)を使って,サチュレーションダイビング(飽和潜水、一回の潜水が15日以上になる)でやらなければならなくなり、別の世界のことになる。
須賀が「追風」にとりつかれたのは、空気で潜れる最大水深とも言える60-67mだったからであろう。そして、駆逐艦であったことも、その理由の一つである。