伊藤勝敏さま
いつも写真集を送っていただきありがとうございます。
がんばれ、がんばるというと日本中ががんばらなければならないときなのですが、元気にがんばっておいでの様子が写真集から偲ばれて、自分もとうなずいています。
実は、今度の写真集が、伊藤さんの本のなかで一番気に入って居て、数日間持ち歩いて、コーヒーブレイクなどで、度々眺め読んでいました。
載っている生物のふるまいは、ダイバーにとっては、珍しくもなんともないことなのですが、一般の人にとっては珍しく、そして、それがしっかりした技術の美しい写真で表現されていて、ああ、そういうことなのだと感動があるのだとおもいます。
僕が初めて夜の海に潜って、昼間と全く違う色で眠っているのを見て感動したように。
僕などは、頭の中がダイビングで詰まっているものですから、何かを書いたり、企画をしたりすると、その対象、相手として考えるのは、ほんのひとにぎりのマイナーなダイビング界です。この本は、すべての人を相手にしていて、しかも、僕のようなダイバーまで、良いと思うのですから、そして、水族館とのかかわり方もスマートで、良く売れるとおもいます。写真そのもののクォリティについては、なかなか撮れないなと思わせるものばかりで、全部、とてもきれいです。
おたがいにもう少し頑張りたいですね。
ここまでがお礼状です。
静岡県八幡野に住んでいて、これまで出した写真集は、数限りがなく、紹介することもできない伊藤勝敏さんから「探魚」という写真集を送っていただいた。
もう、15年前になるのだが、僕が60歳記念、100m潜水を八幡野でやった時に応援してくれた。その時に、ずいぶん長く語り合った。その時以来、本を出す度に送ってくれる。
この写真集を見て、考えさせられた。
マイナーなダイビング業界ではなくて、広く、例えば水族館に来る人たち、学校図書館とかに焦点をあわせており、わかりやすくて楽しい本だから、良く売れるのではないかと思う。
60歳で100m潜った時、あの時以来、伊藤さんのような生き方をすると決めた方が良かったのではないか。沖縄とか、海の近くに住んで、写真を撮り、写真集を出して楽しく生きる。でも、隣の芝生は青く見える。それはそれで、大変なことで、多分、40代から助走していないとできないだろう。僕には僕の業(DNAとか運命)があり、それにしたがって全力を尽くすしか生きる道はないのだろう。
しかし、その業に従うあまりに視野狭窄、自己完結してしまっているこの頃だ。
自分の気持ちがこせこせして嫌だなと思った時「海は、広く豊かで大きい。」と頭の中で言葉にして、海を渡って吹いてくる風に思いを浮かべて、自分を慰め、戒めて生きてきたのだが、その海が悲しいことになってしまっている。