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2017年 05月 03日
アクアマリン プレゼンテーション 話をアクアマリンに戻して。 今、2017年に、おそらくカメラマン人生の最後でそして、頂点だったと思われる1997年、62歳の時点でのコンペ企画書を見ると感慨にひたってしまう。
まず、コンペの公募の通達である。 「福島県海洋文化・学習施設(仮称)マリンシアター大型映像ソフトの企画・制作に係わる企画コンペ実施要領」平成9年11月17日 まず「海を通して「人と地球の未来」を考える」 という基本理念がある。展示の基本方針は、ローカルからグローバルへ、過去現在から未来へ。 展示のメインテーマは「潮目の海 黒潮と親潮の出会い」展示のストーリーは、福島の海 潮目の海を中心に置いて、北の海、南の海 福島の川と沿岸がそれをとりまく。 マリンシアターは、204席 スクリーンサイズは300インチ 今の視点から見れば、普通のハイビジョンで、僕の得意だった3Dではない。まだまだ当時はハイビジョンといってもなかなか大変なことだったのだ。 制作期間は平成10年2月から12年の2月丸二年かける。
まず、ビクターの企画、先に誘いがあり、企画の段階から話に加わった。その内容については、ずいぶん意見の違いがあったが、それは、最終的には演出監督が決めることなので、仕方がないが、企画は、僕の企画ではない。カメラマンは、意見、アドバイスはできるが、最終的には演出に従うことになる。 可もなく不可もない総花的な内容だったが、戦略的にはこれで良いのだということだった。水中撮影とほぼ同じくらい空撮の分量がある。撮影の困難さは比較にならない。水中の方が苦労だ。 映像タイトルは「福島、命沸き立つ海 親潮と黒潮の出会い」 構成は五つに分けられている。 1 プロローグ 福島の陸から海へ 2分 福島山地から海岸、沖合までの空撮 2 黒潮の旅 4分 南西諸島沖から房総沖までの黒潮の流れをカツオの旅を追う。具体的には珊瑚礁の魚、カツオ釣り船にのっての漁の撮影 以下 全体にわたって 空撮 水中 水上 顕微鏡撮影 3 親潮の旅 3、5分 北海道オホーツクの流氷、クリオネなどから南下してくる。 4 潮境 親潮と黒潮の出会い。 4分 福島県沖 潮境で起きる生物のドラマ 5 エピローグ 親潮から地球全体へ 空撮 多分コンペに出てきたほとんどの企画がこんなものだったのだろう。
水中撮影 演出の僕としては、おもしろくもなんともない、と思った。葛西水族園のように3D 函館昆布館のような巨大全天周映像ならこれで良い。しかし300インチのスクリーンでは、普通の映画館の大型スクリーンより小さい。水中のドラマがなければいけない、まあいいや、撮影が始まれば、なんとかなるだろう。それに、あんまり大きいことを言って、驚くようなシーンが撮れなければ引っ込みが付かない。
潮境の親潮と黒潮の出会いに賭けるつもりだった
寒流と暖流が出会うのは、北茨城から福島そして三陸沖に至るのだが、福島はまずその中間に位置する。 僕は、お得意の人工魚礁と、そしてサンマ漁を撮るつもりだった。サンマは、南に下って産卵するが南の魚ではない。暖流の魚かといわれれば微妙だ。北上して豊かな北の海で成長して、北の海から南下する。その回遊の途中、福島沖、三陸沖で漁獲される。小名浜は、サンマ漁船の基地、水揚げの港として名高い。 これは、協力してくれる漁船が難しい条件になるが県の水族館なのだから何とかなるだろう。 もう一つの人工魚礁だが、これは、今度2017年の放射能調査でも取りあげた、オレンジ色のホヤと黄金のアイナメがある。アイナメは四倉の、そのころはまだだったが、ブランド魚になった。 犬も歩けば棒に当たる。たくさん、数多く潜っていれば、とんでもないシーンにぶつかることもある。 福島の人工魚礁は、たいてい40mを越える。減圧も長い。その減圧の時に、オットセイの子供がやってきたことがある。親とはぐれたのだろうか、なつっこくて、離れようとしない。やせている。餌も十分ではないのかもしれない。どうしてやることもできない。船に上がろうとしてもついてくる。 今のようにデジタルで、ウエアラブルカメラを持っていれば、撮れたのだがとれていない。
夏で、海はべったり凪いで、透明度も良い。勇んで潜ったのだが、20m潜ると濁っていて、3mも見えないことがあった。寒流が暖かい水の下に潜り込んでいるのだ。これが寒流と暖流の重なるところだ。 寒流と暖流の境目は潮目で、魚が集まる。空撮ならば、わかるので、空撮もやるのだが、水中撮影の出番はない。水撮の潮目は上下の潮の重なりだ。 何か、驚くような映像を撮りたい。水表面が透明で、中ほどが濁り、暗黒になり、底に行ったら透明でメバルが群れているとか。そして、オレンジのマボヤに金色のアイナメ、とかをワンシーンで廻したい。
ここで平成10年1998年当時の撮影機材について触れておこう。 水中撮影機材 ①一体型ハイビジョン水中カメラ メーカー開発中の機材を完成後レンタルにて使用④に比して大型で機動性に欠ける。 ※当時のハイビジョンカメラは大きい。 ②ケーブル型ハイビジョン水中カメラ ①が当撮影に間に合わない場合に限定的に使用。 ※太いケーブルでつながれていて、船上には大きな録画機VTRがある。VTRを冷やすために冷房が必要で、コンテナーの中で冷房つきで録画する。移動にはトラックが必要で、使う船も大きくなる。今、ウエアラブルカメラのハイビジョンなどを見ると夢のようである。 ③35ミリ8pビスタビジョンカメラ ※35ミリスタンダードのフィルムを横に走らせて 巨大スクリーンの映像に対応している。僕はこのカメラのハウジングをつくっていて、これを使っていた。35ミリフィルムが1秒で28駒飛んでいく。1秒で普通のスチルフイルムの1本が消費される。 ④35ミリフルフレーム水中カメラ 35ミリスタンダードのフィルムを20%拡大してハイビジョンに対応できるようにしたもので、このカメラが一番コンパクトである。過酷な状況での信頼性も高い。 ※ハイビジョンと言っても、300インチだ。制作側はこの④を中心にしたいと考えている。しかし、僕はNGがとても多いカメラマンなのでできれば、ビデオのハイビジョンカメラを使いたかった。 NGが多い。今のビデオ撮影で1時間撮影して、その中から3分使ったとすれば、57分はNGなのだ。ビデオで番組を撮ることが多かった僕は、どうしてもNGが増える。 前に述べたように、僕は、二つの企画の撮影監督で立っている。もう一つはイマジカだ。お世話になっている比重はイマジカの方が重い。プロデューサーも仲が良い。しかし、最初に声をかけてくれたのがビクターだった。完全な板挟みだ。
イマジカの企画はドラマ仕立てだ。 タイトルは「出会いの海」 登場人物 武史少年 インターネット(当時としては先進)でミハエルとレイラという二人としりあう。インターネットのやりとりで、親潮と黒潮のことを学んでいる。 ミハエル カムチャッカ半島のとある村で動物の研究をしている青年、武史に親潮の生態をおしえる。 レイラ ミクロネシアのとあるリゾート地に住む少女 インターネットを通じて武史に黒潮の海中の華やかさ、文化を伝播させたことを教える。 これに平行するように 水中カメラマンの親娘のストーリーがある。親は「生命を育む海」をテーマに親潮を北から潮目に向かって撮影している。娘は「創造の海」をテーマに黒潮に乗って撮影している。親娘は、潮目の海で合流する。武史がそれに参加する。これもインターネットでの繋がりが契機になっている。
おわかりになると思うけれど、水中カメラマン親娘は、僕と潮美だ。当時の潮美はニュースステーションから離れて、すでに月刊ダイバーと係わっていて、フリーになっていた。 どちらの企画をやりたかったかと言えば、当然、イマジカの企画である。 通らなかったけれど、潮美がプレゼンに出たらどうなっただろうか。 この企画が、あわただしく、僕にも潮美も参画していないのだ。なぜといえば、プロデューサーが親しかったから、であろう。 今に至っても、痛恨である。しかし、ifのはなしだ。 でも、この話展示映像よりも、テレビの番組向き?
コンペはNHK{子会社)に負けた。 カメラマンは、親しい友達の南方盈進だった。 NHKは、これにぶつけたわけではないのだろうが、サンマ漁のドキュメンタリーをオンエアーした。 だからだ。とプロデューサーはいう。 さらにそして、このコンペが人の運命を大きく変える。 続く。
by j-suga1
| 2017-05-03 11:01
| 福島
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