親友の、柿田川ミドリのトラストの漆畑さんから電話があった。柿田川の鮎の産卵がすごいよ。無数に産卵しているよ。見においで。
実は、三年前、柿田川への鮎の遡上が激減した。激減したことをテレビで取材しろ、と言うことだ。もう僕は、テレビのレギュラーを持っているわけではないけれど、それにしても、激減したと言うことは、居ないと言うことだ。居ない、何も写らないことを撮影するのは不可能だ。増えたと言うことならば何とかなるのに
僕は、テレビ番組に紹介できないので、東京新聞の写真部、藤原さんに声をかけた。東京新聞の写真部は、辰巳の練習会に毎度来てくれる仲間だ。
行こう行こうということになった。
柿田川は、見物の人が通る木の道の下の浅い湧き間まで、真っ黒になるほど、鮎が集まっている。
浅いから、身体の大きい藤原さんがドライスーツで横にならなければ、撮影できない。
漆畑さんが、のぞき込んで、「ほら、そこで産卵している。」「そら、こちらだ」と世話をしてくれて、うるさい。でも、とてもやさしくていい人だ。
上から見下ろしても、鮎が多いが、水深20㎝に顔を浸けると、一面の鮎、また鮎だ。
夕方になると、そこここで、産卵が始まる。雌が雄に囲まれるように集まると、雌が産卵し、その上に重なり合うようにして、雄が放精する。
藤原さんが良い写真を撮れれば良いので、僕はどうでもいいや、と思っていたのだけれど、カメラをかまえて、水の中をのぞき込むと、熱くなる。ぼくもまだ、カメラマンのはしくれだ。ハンターだ。
それに鮎と遊んでいる気分になって楽しい。
カメラをかまえている前だけでなく、僕のおなかの下でkもごそごそする。産卵しているのだろうか。近くで見ると鮎がいとしくなる。