竹下さんのアルバムのすごいところは、写真のデータが記入されていることである。
1957年(昭和32年)10月8日ー15日
水深18m 透明度12m 千葉県小湊実験場の磯
科研式水中カメラ とぷこーるf3.5 内臓
X線フィルム使用 1/100 F8 コニドールスーパー(現像剤)20度C 15分
ベロナ3号、コレクトール(現像剤)、富士フィックス(定着液)
X線フィルムを使っているが、なぜか、X線フィルムを使って、増感現像をすると水中写真がきれいに撮れた。僕も、この翌年、竹下先輩の後をつぐような卒業論文を書き、写真もたくさん撮ったのだが、データーはおろか、写真一枚残っていない。その昔、離婚して、パンツ一枚で家出したときに、全部紛失した。
竹下さんのデーターを見ると、学校の暗室に閉じこもって、現像をして、プリント自分でやったのを思い出す。僕のデーターは、現像財は、パンドールで、やはり20度15分だった。温度が高くなるほど増感で、時間が長くなるほど、濃くなる。あまり時間をかけすぎるとネガが真っ黒になり、プリントは真白になってしまう。
これは、ネオパンSSSで1/100 F3.5 現像はコニドールスーパーで20度だ。
ネオパンSSSの方がソフトな感じがする。
そう、X線フィルムは調子が硬いので、コントラストがつきにくい水の中でもくっきりと写るので使っていた。
これが理化学研究所が作った当時では最高のカメラで、僕は40万だと聞いていたが、竹下さんのアルバムには、20万と書いてある。大学卒の初任給が15000円程度、僕の場合は8500円、八千五百円だったから、高値の花だ。教室でもとても買えないから、いつも借りて使っていた。
下に伸びている棒の先に、フラッシュバルブの傘がある。レンズと光源を離して、濁りを映さないようにしている。